Jrさんの体験談
Jr@軍団
1986年、当時私(以下J)は高校3年生。札幌のK高校へ通ってました。
10月、事の起こりは突然やってきました。
理科の選択科目である化学の授業のとき、先生が 言いました。
「あー、3組のT子さんは、身内に不幸があったため、 4、5日欠席するそうだ。戻ってきたら、みんなも気を使うように」
このとき私は、初めてT子の存在を知りました。このことを当時のクラスメートの、KとSに話しました。
J「なあ、T子ってどんなやつだっけ?」
K「さあよく知らねえなあ、、、」
S「たしか化学の授業のとき、Jの斜め前に座ってるやつじゃないか?」
J「そうだよなあ、だからその席空いてるんだろうけど、顔が思い出せねえんだよなあ」
K「いいじゃん、そんな存在薄いの、ほっときゃ」
そうなんです、今から思えば本当にほうっておけばよかったのです。
しかし、化学の授業は週に8時間あり、半年もの間、席替えがされなかったにも関わらず、俺に認識されなかったT子ってのは どんなやつなんだ?との思いが強くなり、私は妙な好奇心が涌いてきました。
数日後、T子が現れました。化学の授業の前に、3組のHRがありましたが、まじまじと現物を見た化学の授業のときがインパクトがありました。
(こいつがT子か、確かにこりゃ存在感ねえな。ま、でも、身内の不幸の後だ。そういうことは黙ってよう、、、)
そんなことを思ってた私は、その罪悪感からか、こともあろうにT子に声をかけてしまったのです。
「あ、、、その、、、元気出してね」
ファーストコンタクトは、こんなたわいもない言葉だったと思います。
私にしてみれば、3日もたてば忘れてしまうような、極めて日常的な出来事でしかありません。
しかし、T子にとっては違いました。
そう断言します。なぜかというと、 この出来事を境に、T子の俺に対する行動が、
誰の目にも明らかに変わったからです。
まず変わったのが、化学の授業のときです。
それまで一度もなかったことなのに、私は質問 攻めにあいました。
「ねJ君、この問題どうやればいいの?あ、あとこれとこれも教えて」
始めはめんどくさいと思いつつも、私は答えていました。
しかし、T子の行動は日増しにエスカレートしてきました。
私の机やノートに、無断で落書きをするようになりました。
(J君、ファイト!)
T子にしてみれば、私を応援していたつもりなのでしょうが、気のない子にここまでされて、
愉快なわけがありません。私は徐々に、T子に対し腹が立ってきました。
段々と冷たい態度で接するよう、私は努めていたつもりですが、
T子はおかまいなく、なにかにつけ、私につきまとうようになりました。
今で言うストーカー、まさにそのものでしたね。
ただ高校生の時分、さすがに家までは来なかったようですが、T子に怒りを覚えていたころは、四六時中監視の目があったような、そんな気分 でした。
私も数箇月後に受験を控えた身です。
こんなことで自分の人生を目茶苦茶にされてたまるか!
と、ついに私は決意したのです。
昼休み、めしを食って体育館で軽く汗を流し、自分の席に戻ったところ、そこにはT子がどんと座っていたのです。
私は言いました。
「おい!T子!そこをどけ!」
これだけでは終わりませんでした。
「おい、てめえここで何やってたか知らないけど、はっきり言って、おまえは迷惑なんだ!今後、俺に関わるな!おまえの不快なそのツラを、俺の視界に二度と入れるな!(あとは、放送コードにひっかかるような言葉)」
私は怒りにまかせ、思い付くままの言葉を機関銃の如く発しました。
それを見ていたクラスメイトのKとSが、放課後私に言いました。
K「なあJよお、おまえあれはちょっと言いすぎだったんじゃないか?」
S「Jの気持ちも分からんでもないけど、ほどほどにしといた方がよかっただろうな。おまえ、アツくなってたから気が付かなかったと思うけど、あの後のT子の落ち込みったら、凄かったぞ。なんていうか、生気が感じられないくらい、そんな風に見えたな。」
J「うん、たしかに俺もそう思っていたんだ。けど、その原因はT子にあるんだぞ。おまえ達も知ってるだろう、T子の俺に対するちょっかいを。まして俺らはもうすぐ受験という大事な時だ。こんなことでつまづきたくはないからな。俺の気持ちも分かるだろう?」
というわけで、私も少しは反省はしていたのですが、それ以上に「受験」を理由に、自分の行動を正当化 していたのです。
あくまで自分が正しいと思っていたので、やがて月日がたつと、T子への罪悪感も薄れ、またそれ以降、T子も私に一切関与することはなかったので、私にとっては元通り、存在なき者となったわけです。
11月、小雪が舞い出し、日暮れも早くなるにつけ、私達にはいよいよ「受験」の2文字が現実を帯びて来ました。寝不足の日々が続きます。
私も例外ではなく、毎日深夜まで受験勉強に追い込みをかけていました。
ある夜、この日も遅くまで机に向かっていました。時計を見ると午前一時。 (そろそろ寝るか)
布団を敷き、電気を消します。
すぐに眠気が、、、やってくるはずなのですが、このころの私は極度の疲労からか、ひんぱんに金縛りに見舞われました。
まあ、ある意味慣れっこでもあったので、始めは(ああ、またか、早く去ってくれ、金縛り君よ)
と軽い気持ちで考えてました。しかし、この日はいつもと様子が違います。
縛られて いる時間が長かったせいもありますが、何か人気を 感じるんです。
それも、電気を消した部屋の暗さより、はるかに「陰」の、それも邪悪な気を感じました。
それは部屋の天井の、足元の側からです。
(おいおい、やだなあ、なんだよこれ、、、)
と気持ちは部屋から出たい一心なのですが、なんせ 体が言うことをききません。
そうこうしてるうち、邪悪な気はますます己のパワーを増大していき、感じるだけのものから、やがて私の耳に聞こえるものへと姿を変えました!
天井の板がガリガリと音をたて、その音は回を重ねるごとに大きくなります。
(ネズミにしちゃうるさすぎる。こりゃこの世の ものとは思えない。もしや、、、!くそっ!早くほどけろ!動け!)
私はもがきました。
ほんとうにこのときは、凄まじい殺気を感じていたので、文字通り必死だったのですが、もがけばもがくほどアリ地獄に引きずりこまれる感じでした。
そして、ついに恐れていたことが!
私の聴覚に訴えていた気が、ついに視界へ入ってきました!
ガリガリと音をたてていた天井の板の一枚が、すっと横にずれました。その空いた空間から、女が逆さになって、凄まじい形相でこちらを睨んでいます!
まぎれもなくT子です!!
T子が復讐にやって きたのです!!!!
(うわっ!こんなのありか!ちくしょう!)
T子は天井から部屋に降り立ち、その形相を変えることなく私に近付いてきます。
そして、寝ている私の胸元に乗り、喉をぐいぐいと締め付けたのです!
(よくも人前であんなことを、、、許さん!)
T子が震える声で、はっきりと言いました。
私は、心の中で必死に詫びました。
(すまん!あれは言いすぎた!俺が悪かった!だから、殺すのだけはかんべんしてくれ、頼む!)...
どれだけ時間がたったことでしょうか。
私の必死の 謝罪が功を奏したのか、徐々に殺気は薄れ、
それと ともにT子の姿も、すうっと消えてなくなりました。
外れたと思った天井の板も、元通りだったので、
(なんだったんだ今のは、金縛りはともかく、あまりにも悪い夢を見たものだ、、、そうだ、今のは夢だったんだ、そうに違いない)
と思い込むことにしました。
それにしても、私はすっかり目が覚めてしまいました。
心臓の鼓動も乱れています。
このままでは 寝付かれないので、私は居間で、覚えたての酒を飲むことにしました。
ワインをグラスに2、3杯、 一気にぐいっと飲み干しました。
おかげで、酔いが 早く回ってきたので、三時ころにはようやく眠りに つけました。
朝がやってきました。
学校へ到着しても、頭はまだ半分寝ているような感じでした。
1時間目は 化学です。
教科書とノートをもって、教室を移動します。
KとSもやってきました。
K「うぃっす!J、おまえのその眠そうな顔はなんだ?いつも眠そうだけど、今日はとびきり絶好調だな。徹夜か?」
J「いやあ、徹夜ってほどでもないけど、ゆうべ悪夢にうなされて、あんまり寝てないんだ、、」
このとき私ははっきりと見ました。
この会話を 斜め前の席で聞いていたT子が、
私の方を 振り向き、そして、ニヤリ...と。